研究者Story

野原 克仁先生

Story02

環境経済学(環境評価)
環境政策、観光の定量分析

経済学部経済学科

野原 克仁先生

今、環境省のHPで未来の天気予報を見ると、2100年には日本全国は40度を超えているんです。
ですから、今の気候、今の自然を守って欲しいという思いが強くあります。

未来の天気予報

研究テーマは「自然環境の価値を測ること」。

自然は値段がつかないので過剰利用され、人間が大量に破壊した結果、今の環境問題に繋がっている現状があります。
木を一つ取っても、水を浄化したり、災害を防止したり、海にまで影響があったりする。そういう自然界の価値を、きちんと経済学を使って評価しようという研究です。

自然には「利用する価値」と「非利用価値」というものがあります。「利用する価値」には、割り箸に使うなどの「直接利用価値」、観光で楽しむなどの「間接利用価値」、そして、薬といった自然由来の物などの「(将来利用することができる)オプション価値」があります。

一方、世界遺産の屋久島といった、今無くなったとしても直接私たちの生活に変化は無いけれど、気持ち的に嫌だというものがあります。それが「存在価値」です。利用しなくても生まれている価値、それこそが「非利用価値」です。

屋久島

自然環境の価値を測ることは、国の政策を動かす力があります。

研究の結果は、基本的には学術誌に論文として発表しますが、国の政策に大きく係るものでもあります。一番大事なのは、自然科学の研究者たちが「環境問題がこれだけ悪影響を及ぼしています」ということを明らかにしてくれたら、じゃあそれをどうやって政策に生かすか、ということです。

ただ、政策はコストを重視しますから、それだけのコストをかけてどれくらいの便益があるのか、というところを見ます。そこで、環境経済学者が測った自然環境の価値を用いて、その橋渡しをするのです。

野原准教授

世界的に海水温が上昇し、生態系がバランスを崩している。

沖縄のサンゴ礁が「白化現象」といって、どんどん死んで白くなっていくのですが、これは大半が人間が惹き起こした気候変動のせいです。そのサンゴ礁を保全するために、サンゴ礁の価値を測っています。

海水温がたった0.5℃上がるだけでサンゴは死滅します。サンゴは全ての海の中で(面積が)0.1%にしかすぎませんが、海の生き物の25%はそこで生息しています。ですから、サンゴがなくなるということは、25%の海洋生物がいなくなると同じことです。

今、千葉県館山にサンゴができたり、北海道でブリが獲れたり、海洋生物の生息域が北上していて、たった0.5℃上がっただけでこれだけ変化してきている。生態系のバランスってわずかなところで支え合っているので、下手な刺激を加えると一気に崩れてしまう。そういうことが海の中で起こってしまっています。

沖縄のサンゴ礁

日本の環境問題における課題は、関心の低さです。

日本は自然環境が豊かな方ですが、データ(※)を見ると「環境問題についての意識はありますか?」という質問で、10代〜20代の子は19%しか「ある」と答えていない。先進国は軒並み高い割合であることから、この国は意識が低いと感じます。
※2016年の国立環境研究所と内閣府の環境意識調査

その一つの原因は教育だと思います。例えば、京都議定書は教科書に載っているので、多くの学生は知っていますが、生物の多様性に関する重要な議定書の名古屋議定書は全然知らない。「名古屋」と日本の地名が付いているのにも関わらずです。それは、やっぱり教育がされていないからです。そういうところを大人が意識を持って教えていくことが大事だと思います。

授業風景

今、私たちが環境のためにできることは?

本当にちょっとした意識の変化だけでいいと思うんです。例えば、講義室の電気がつけっぱなしでも誰も何も思わない。お水を出しっぱなしにしないとか、シャワーの時間を少し短くするとか、そういうちょっとした心掛けをみんながすれば、大きな変化になると思います。
それを見て子供も育ちますし、そういう日々の意識をちょっと変えてほしいなっていうのは大人の皆さんへのお願いです。

スイッチオフ

自然界には、目に見えない大きな価値があるという面白さ。

名古屋議定書の時に、生態系にはすごく経済的な価値があるということで、初めてその経済学と生態系が注目されたんです。TEEBという本には、環境経済学の手法を使って生態系の価値を測ったことが書かれています。

例えば、ポリネーションサービスといって、ミツバチが花粉を運んでくれるサービス。農家がお米を作る時に農薬を散布してカメムシを殺すのですが、同時にミツバチも死んでしまうんです。今、日本のミツバチがどんどん死んでいて、そうなると受粉してくれなくなるので、りんご農家などは手で受粉しないとならない。それって物凄い価値の損失なんです。ミツバチが花粉を運んでくれるサービスを世界規模で測ると何兆円という価値なんです。そういうものが、ちゃんと価値として、値段として見えるのが、環境経済学が重要であり、面白いところだと思います。

ミツバチ

「環境に優しい農業って何だろう?」という思いから生まれた、ゼミ運営のエコファーム。

自分自身の経験でもあるんですが、「大学のゼミって難しい本を輪読して、結局それが世の中の何に役に立ったんだろう?」と。それなら学生たちが、大学で学んだことが目に見えて成果になった方がいいんじゃないかと思い、一つ目標を決めて、それに向かって勉強する、というスタイルにしました。その中の一つが農業でした。みんなで考え実践してみて、その中から自分たちで興味が出てきた循環型社会とかリサイクルとか、そういったことを勉強していこうという形になりました。

土を触ったり、収穫の喜びとか、去年は野菜の価値を測って全国大会で発表もしました。座学だけだとどうしても飽きてしまいますが、そういう自分たちで取り組んだものが発表という形に現れると、目に見えて成果が違うなと感じました。

エコファーム

北海道に移り住んで見えてきたこと。

最初は本州を離れるのか・・という気分でしたが、来たら来たで北海道が大好きになりました。北海道のポテンシャルはすごいです。食料自給率200%とよく言われますが、再生可能エネルギーも200%以上あります。それらがうまく機能してれば、昨年のブラックアウトも起こらなかったはずです。自然環境を生かして、この北海道を盛り上げたいなと強く思っています。

北海道の風力発電

自然の大切さを肌で感じる、体験する。それが授業スタイル。

ゼミ合宿ではラフティングもするし、とにかく体験して自然の良さを自分でわかって欲しいという思いが強いです。そこから、やっぱり自然って大事だよね、守らなきゃいけないよねっていう気持ちが芽生えると思うのです。

こういう教育をしている大学は他にあまり無いかもしれませんが、クーラーがガンガン効いてる中で「環境って大事だよね」って言っても説得力がないと。北海道はこんなに涼しくて四季がはっきりしています。だからこそ、自然を身近に感じながら、環境問題の勉強をして欲しいなと願っています。

ラフティング

Profile

野原准教授

経済学部経済学科

野原 克仁先生

2005年 東北大学経済学部経済学科卒業 学士
2007年 東北大学大学院 経済学研究科経済経営学 修士課程修了 修士(経済学)
2010年 東北大学大学院 経済学研究科経済経営学 博士課程修了 博士(経済学)
東北大学大学院生命科学研究科生態適応グローバルCOE助教、宮城学院女子大学非常勤講師等を経て、2011年4月より北星学園大学経済学部経済学科専任講師として着任。
2015年4月より北星学園大学経済学部経済学科准教授。

PAGE TOP