松浦 年男先生

Toshio Matsuura

MATSUURA,Toshio

言語学、音声学、音韻論

文学部 共通科目部門

松浦 年男先生

「昨日、バイト先に先生が来た“さ”」
東京の人間としては、そんなところに“さ”は絶対使わない、という“さ”がいっぱいあったんです。これはどういう意味なんだ?と思って、色々観察しました。すると、この“さ”は、相手が知っている話題では使えないことがわかりました。
例えば、同じ授業を受けている学生に「昨日、試験だった“さ”」と言っても、「いや、私も試験受けたんだからそんなこと知ってるよ」となるので、こういうケースに“さ”は使えない。
この“さ”は、「相手にとって新しい発見である」という前提が必要なんです。

地方で変わる、日本語の音

しりとりは、“ん”で始まる言葉が無いから成り立ちますが、沖縄や九州に行くと“ん”で始まる言葉があります。
天草地方に行くと「梅(うめ)」は「“ん”め」と発音されるので、しりとりの“ん”でも負けないんです。

大江天主堂

研究のテーマは?

僕の興味関心は、音の方にあるので人間の言語として可能な音はどういうものか、そのために何種類の音があるのかを明らかにしたい。
最近は、日本語の方言の特に「音声、音」に注目して研究しています。方言にはどういう音があるのか、どういう音の区別をするのかということを実際に方言の母語話者へインタビューをして、それを聞いて分析しています。

研究テーマ

言葉の違いから何が分かるのですか?

教科書には日本語の音はこうだって書かれているけど、実は方言を調べていくともっとこんな区別もありますということがわかってくる。
注目されていなかった方言から、日本語にはどういう可能な音があるのかをどんどん追及していきたい。そして、人間の言語としてありえる音というのはどのくらいあるのか、ということを知りたいと思っています

人の言語

言語は文化や習慣が反映しているのですか?

難しいですね。それは文化の問題なのか、偶然言葉が分かれたのかなどは判断ができない。
文化に関しては、アフリカのバントゥー系と呼ばれる民族がよく使う音で、例えば「ばびぶべぼ」と言うときに空気を吸い込むように発音する言葉があります。そのような音がアフリカのある一定の地域にすごく多いんです。
※実際の発音は動画をご覧ください。
これに関しては、親の名前が関係しているという説があります。親の名前の音を子供が含んではいけない決まりがあって、違う音にするためにどんどん増えていった・・という話です。本当かどうかは確かめられないですが。
もし、この説が本当だとしたら、文化が反映されていることになります。

アフリカ

専門である国内の方言の研究について

これは博士論文をまとめたもので、長崎方言のアクセントについて外来語とか複合語を調べてどういう規則性があるか、それが頭の中にどのようなルールとして入っているかを分析して、頭の中から発音するまでのプロセスについて書きました。
研究では、現地に行って母語話者の方にマイクをつけてもらい、単語をなんと発音するのかを聞いたりします。ただ「梅(うめ)」って発音してくださいとお願いしたら「うめ」って言ってしまったりするので、まず「梅が咲いたねぇ。きれいだねぇ」などの簡単な短い文を作り、翻訳してもらいます。そうすると慣れてきて「“ん”め」とか方言の形が出てくるようになります。相手も緊張するので最初のうちは標準語を喋るんですが、慣れてくるとどんどん方言が出てきます。
僕らはこうやったら(方言が)出やすいというやり方を持っているので、それをフル活用して実地調査しています。

著作

授業はどの様な内容ですか?

北星では日本語表現という授業を担当していて、一年生にレポートを中心とした文章の書き方を教えています。レポートの文章は、最初に概要・要点を述べ、次に詳細を記し、最後に要点を繰り返すという構造になっているので、その単位で文章を書くという習慣をつけさせます。
この基本構造に基づいて、細かく指導をしていきます。まず何をテーマにするか、テーマの選び方や文献の探し方、テーマが決まったら文献をどのようにまとめるかなど、一つ一つの手順を教えて、実際に学生にレポートを作成してもらいます。後期には、さらに進んだレポートを完成させるというようなやり方をしてます。

文章作成

学生たちの文章力はどう感じますか?

必ずしも僕自身は学生の文章力が低いとは思っていません。
もちろん、「こういう言葉を知らなかった」のようなことを言われる時はありますが、少しコツを教えれば、ほとんどの学生がレポートの体裁を持った文章を書くことができます。
ですから、文章力が極端に低いといったことはあまり感じません。

授業

個別の文章指導は誰でも受けられますか?

ラーニング・コモンズでやっている個別の文章指導は、どの学生でも受けることができます。予約制で1回30分です。私を含めて3名のチューターが毎日在室しているので、申し込みがあれば個別指導を行います。
例えば、テーマをどうしようとか、テーマをどうやってまとめるとか、文献の探し方、概要的なことは書けたけど具体的に文章にできないとか。書いた文章が合っているか読みやすいかなど、それぞれの学生の要望に応じてアドバイスしています。私が直すのではなく、一緒に考えることで学生自身の書く力を伸ばす。そういう指導をしています。

個別の文章指導

文書を上手に書くコツを教えてください

学生によく話すのが、ダメな文章の書き方はすごい簡単ということです。何も考えずに思いのまま書く。そうしたらすぐにダメな文章が出来上がるよと言っています(笑)
逆に考えれば、まず何を書くかをよく考える、全体の構成をよく考える、書いて読み直す、読み直して直す、そうすれば良い文章になっていきます。

文献

Profile

松浦 年男教授

言語学、音声学、音韻論

松浦 年男先生

2000年 大東文化大学 外国語学部 日本語学科
2002年 九州大学 大学院人文科学府 言語・文学専攻 (言語学専修) 修士
2007年 九州大学 大学院人文科学府 言語・文学専攻 (言語学専修)博士課程満期退学
2007年-2009年 九州大学 専門研究員
2008年 九州大学大学院 博士(文学)
2009年-2013年 北星学園大学 文学部 専任講師
2013年-2020年3月 北星学園大学 文学部 准教授
2020年4月 北星学園大学 文学部 教授

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