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TAKAHASHI, Asumi
TAKAHASHI, Asumi
臨床心理学, 精神神経科学 キーワード(自殺予防、援助要請、グリーフ)
社会福祉学部 心理学科
髙橋 あすみ先生
「人の心を理解すること」が、社会を変える力になる。
—— 自殺予防と教育啓発に向き合い続ける、心理学研究者に聞く“学びの意味”
高校から大学に進学する際、心理学を学ぼうと思った理由は、多くの学生と大きく変わらないと思います。心理テストや占いが好きだったことなど、人の心そのものに強い関心があったことが一つです。
また、子どもの頃から人の相談に乗る機会が多く、自分自身もそれを苦に感じることなく、むしろ自然に関わってきた感覚がありました。そのため、カウンセラーのような人を支える仕事にも興味を持っていました。
さらに、高校生の頃にメディアを通じて自殺の問題に触れる機会があり、「自殺予防に関わることがしたい」と考えるようになったことも、心理学を学ぶ決定的なきっかけの一つです。

心理学科では、1年生全員が履修する必修科目「心理学統計法」、2年生必修の「心理学実験」を担当しています。
心理学統計法では、研究を行うために必要なデータ分析の基礎を学びます。心理学実験では、古典的な心理学の実験を実際に行い、得られたデータを分析し、レポートとしてまとめます。これらの授業は、他の心理学教員と協力して実施しています。
そのほか、「健康医療心理学」と「障害者・障害児心理学」も担当しています。
健康医療心理学では、心の健康だけでなく、身体的な健康や、健康状態をより良い方向へ高めていくための考え方に焦点を当てています。北星学園大学が大切にしている「ウェルビーイング」や、自殺予防、公認心理師として医療現場で働く際に必要な視点についても扱います。
障害者・障害児心理学では、発達障害をはじめ、学生にとって馴染みの少ない内部障害(内臓に障害をもつ方)など、さまざまな障害について学び、障害を負った際に生じる心理的影響についても考えていきます。

大学教員になる前から、そして今も大切にしているのが「自己効力感」です。
自己効力感とは、自己肯定感や自尊心とは少し異なり、「自分は何かができる」という見通しや期待の感覚を指します。行動を起こすために非常に重要な心理だとされています。
そのため、授業内容そのもの以上に、学生一人ひとりの考えや発言を肯定的に受け止めることを意識しています。
「その考え方も大切だね」「今のアイデアはとても良い」「質問の視点が鋭い」といったフィードバックを積極的に行い、学生が自分の考えに自信を持てるよう心掛けています。
作業に取り組んでいる様子を見たときには、クラス全体に向けて良い点を共有し、「今の考えは、今後こうした学びにつながっていくよ」と伝えるなど、すべての授業でポジティブな言葉掛けを大切にしています。

主な研究テーマは、自殺・自死に関する心理学的研究です。
心理学や医学の分野では、自殺を防ぐための「予防」に関する研究が中心ですが、その中でも私は「一次予防」、つまりすべての人を対象とした教育や啓発によって自殺を防ぐことに重点を置いています。
博士課程時代の指導教員と共同で翻訳した『メディアと自殺』は、報道と自殺の関係を扱った研究論集です。
自殺を報道することで自殺者数が増加する「ウェルテル効果」が知られる一方で、危機から立ち直った回復のストーリーが予防につながる「パパゲーノ効果」も存在します。本書では、そうした最新の研究が幅広く紹介されています。
専門的な内容ではありますが、現代にも通じる重要なテーマが多く、関心のある方にはぜひ手に取っていただきたい一冊です。

言葉としては「使命(ミッション)」に近い部分もあるかもしれませんが、私自身は、自殺を考えている本人よりも、むしろその周囲の人々に強い関心を持っています。
かつては、自殺が「個人の問題」として語られ、心ない言葉がメディアで発せられることもありました。
だからこそ、「自殺はどのような背景で起きるのか」を周囲の人に伝え、一緒に予防に取り組むことが大切だと感じています。
現在も、教育や啓発を通じて、周囲の人が理解を深めることの重要性を伝え続けています。
2024年に刊行した『大学における自殺予防対策―理解と実践的アプローチ―』では、大学における自殺予防の取り組みを幅広く整理し、今後の方向性を提案しています。ゼミ生とのグループディスカッションを収録している点も特徴です。

ゼミ(専門演習)では、自殺の問題に関心を持つ学生が多く集まります。
ただし、教育啓発そのものを卒業論文として扱うのは難しいため、「大学生は何を考えているのか」「自殺を考えることに関係する心理は何か」「自傷行為に関わる心理」など、より周辺的なテーマを扱う学生が多いです。
また、有名人の自殺や死が社会や個人に与える影響について研究する学生もいます。
今年刊行した『有名人の死に心が揺れたら―喪失と自殺予防の心理学―』では、有名人の死によって生じる感情の揺れを心理学的に解説し、対処の方法を分かりやすくまとめています。これまでにあまりなかった分野の一般書で、「推し活」をしている方にもおすすめできる内容です。

心理学を直接生かしたい場合、公務員や福祉分野などの対人支援職を目指す学生が一定数います。
一方で、心理学は自己理解や他者理解を深める学問であり、人生のあらゆる場面で役立つため、一般企業に就職する学生も多くいます。
進路の選択肢は幅広く、学びをどう生かすかは学生自身の自由です。

北星学園大学は、図書館をはじめとした学習環境が非常に充実しており、興味のあることはもちろん、これまで関心のなかった分野にも気軽に触れることができます。
先生方の専門分野も幅広く、規模が大きすぎて迷ってしまうこともなく、「ちょうどよい大学」だと感じています。
もし北星学園大学の活動に少しでも興味があれば、ぜひ一度足を運んでみてください。
また、心理学に興味を持ってほしいと考える保護者や周囲の大人の方には、子どもとの「心の交流」を大切にしてほしいと思います。
感情を否定せず、「どんな気持ちなの?」と寄り添うこと、そして多様な人と関わる機会を与えることが、心理学への関心を育てる第一歩になるのではないでしょうか。

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臨床心理学, 精神神経科学 キーワード(自殺予防、援助要請、グリーフ)
髙橋 あすみ